はじめての卒園アルバム
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2021.9.7
卒園アルバム 作り手と受け取り手のギャップ
(この記事は2020年9月22日にリリースしたものです)
こんにちは、卒園アルバム制作kidsDon!(キッズドン!)の宗川 玲子(そうかわれいこ)です。
新しい生活様式の浸透により、コロナと共に生きてゆく方法がだんだんと見えてきて、園の生活は平時に戻ってきてるのではないでしょうか。
今ある環境は先生方のたゆまぬご努力と想像以上の苦労によって支えられてるという事を、先生やアルバム委員方との会話から痛切に感じえます。
今年度アルバム制作が見送りとなる園が多くある中で、制作が許される環境は大変素晴らしい事であり、チャンスととらえるべきと考えます。
どうかこの忘れる事のない未曾有の事象の記録と併せて、貴重な思い出のアルバムを制作され、皆様に喜ばれることを祈念いたします。
さて本日は、卒園アルバムに対する、作り手と受け取り手それぞれの思いや考え方にはギャップがあり、受け取り手への理解を深めることにより制作でのストレス軽減や、心にゆとりを持つ事ができるといったお話しをいたします。
受け取り手の心情
まずはじめに受け取り手の心情についてです。
期待していない
読み手ははっきり言って「卒園アルバムの内容に期待していない」というのが圧倒的です。
我が子がある程度掲載されており、氏名等のプロフィール表記に誤りがなく、それなりの体裁になっていれば問題ないというのが本音になります。その理由の一例としては
・アルバム委員では無いためとやかく言う権利がない
・卒園アルバムの存在自体を意識していない
・素人撮影-素人制作の構造に感動を求めない
・卒園アルバム自体に価値観を見いだせない
などが挙げられます。
受け取り手の重視内容
そんな「期待していない」中でも「重視」してる点があるとすればどんな事かを、以前保護者アンケートで伺いました。
トップは群を抜いて「見やすさ」でした。
つまり、気をてらう過度な装飾や、雑然とした多量の切り貼り構成、あまり意味をなさない写真の加工等はさほど必要なく、写真そのものが生き生きと見える仕様を希望されているのです。
つまりは何の加工もしていない四角形の写真がバランス良く並ぶだけの構成でも、見る側にとって高評価であると言えます。
しかし作り手の考えはこの読み手の心境とは異なる事が多大にしてあります。
期待を超えるアルバムを目指す作り手
作り手は「読み手の期待を超える内容」を創作しようと孤軍奮闘するのが自然と言えます。
これは大変素晴らしい志であり、この意欲が制作の推進力となり、結果誰もが感嘆するアルバムに繋がる事は言うまでもありません。
しかし、意気込むあまり、想定通りに進まない、思いの通りに作れない、時間不足、アイデアが一向に浮かばないといった障壁にぶつかる事もまた多いのです。
根底にある「園児や保護者に最高に喜んでもらえるアルバム制作」を志に置き、熟考するあまりに必要以上の労力を強いて完成前に辟易してしまっては、これほど残念なことはありません。
全力の7割程度で推進
もし制作途中にて上記のような「悩み」が現れたら、高い志が閉ざされてしまう前に「そこまで読み手は期待していない」という心情を想像し、悩みの根元となっている部分をスルーし、やや不完全状態でもこれで良しとする踏ん切りが必要と思われます。
そして、担当しているページ制作を、気持ちを楽にし考えすぎずにやりとげる…これが一番大切なことではないでしょうか。恐らくその状態でも受け取り手はオリジナル性ある素晴らしい内容と感激するでしょう。
卒園アルバムは長期に渡るプロジェクトであり、マラソンの様にペース配分が重要です。
常に全力疾走ではなく、その7割程度のエネルギーで完走する事が大切と言えます。
作り手の心情
作り手は、アルバム制作に高い意欲を見せ、読み手の期待を大きく超え、また期待を良き方向に裏切るようなサプライズのある構成を計画する事が顕著と言えます。
しかし前述のように意気込むあまり理想と現実の合間にて思い悩む事が多い事実もあります。
卒園アルバム制作に向き合う作り手の心情は、その委員によって十人十色です。
クリエイター気質、外注派、自己満足派、徹底した受け取り手目線気質、複数のコンセプトを併せ持つ柔軟派…などなど、書ききれぬほど様々なタイプが委員には存在します。
このあと3つのタイプのアルバム委員の制作における心情と、制作過程で思い悩んだ事を事例でご紹介します。
思想の異なる3名の事例
タイプの異なる3名の卒園アルバム委員リーダーの談話を紹介します。下のボタンの「+(プラスマーク)」をタップするとご覧いただけます。
委員の間で浮上したアイデアは「漫画のカット割風」にして注目度を上げる試み。私たちの中で漫画描画の経験者はいないけれど、きっと園児も保護者もこの構成に驚き、楽しんでもらえるだどうと、早々に着手しました。
早々に暗礁に乗り上げ
ですが早速いくつかの問題が浮上し暗礁に乗り上げる兆しが…
・保護者は園に撮影で立ち入り事ができず、過去に先生が撮影した写真での構成となる(理想のアングルや理想の場所での撮影ができない / 園児掲載の公平性が保てない)
・漫画風ゆえ「吹き出し」の多様が必要となり、掲載できる写真点数がその分減少(写真を見せるアルバムとしての概念が揺らいでしまう)
・カット割が多いと複数人で撮影された写真の反映が難しい(友達との交流シーンがアルバムでは重要)
・とにかく通常のページより制作に時間を要す
など、考えれば考える程どうすれば良いかわからなくなり、作業は中断の連続で思うように進みません。
友人に相談
「自分自身が納得しなければ良作とは言えない」「園児の公平性は無視してでも漫画風を前面に出してしまうか」など葛藤を繰り返し、卒アル委員ではない園の友人に相談をしました。
友人からは「私から見れば“しょせんは卒園アルバム”。園を知らない人にプロモーションするわけでも無いし、お金を得るのでもない。園を知ってる人しか見ないのだから、園児が同数掲載されてる事を守って、もっと楽に作ってみれば?」の言葉をもらい、私の迷いはかなり吹っ切れました。
最終的にはコラージュのような仕上がりに最小限の吹き出しをつけるに留め、たくさんの妥協を以て完成としました。
受け取り手の感想
ですが思いの他、園児や保護者からはこの構成に驚きの声をいただき、胸が救われた思いでした。
「本当はもっと細かく漫画風に表現したかった」と言葉を返すと「でもそれだとかえって見にくくなるからこの程度でいいと思うよ」と数名から同様の返答があり、卒園アルバムは受け取り手を意識した制作をするべきだと気づきを得ました。
卒園アルバム制作は自由度が高いと勘ぐっていたけれど、制約によって思いの他できないことも多いとわかり、妹の時はこの経験を活かして望みたいと思います。
キッズドン!より一言
一見切り貼りはアナログ作業である事から、グラフィックソフトを使用したパソコン制作と比較し、思い通りに事が進められると思われがちですが、それは全く反対です。
パソコンでは写真のサイズは自由に可変でき、さらに様々な効果を与える事ができますが、切り貼りは「目の前にある写真のサイズのまま」使用しなければなりません。適性サイズの写真を選ぶだけでも膨大な時間を要し、さらに作業を開始した後にぶつかる課題は「失敗は許されない」という事です。
パソコンであれば「戻る」「やり直し」等がクリック一つでできますが、切り貼りは切ったあと、貼った後の修正は非常に難儀です。切り貼り制作で作られた原稿は、いわば「多くの苦労と多くの忍耐の結晶」と言えます。
続いて「普段から個人的に切り貼りアルバムを制作」していたBさんの体験談です。
パソコン制作に引けを取らぬレベルの高品質な内容に仕上げようとに制作を開始しました。
私は以前から我が子の写真を切り貼りにし、フィルム台紙アルバムに貼る事を趣味としていたため、制作のノウハウが少なからずありましたが、他のメンバーは全くの初心者。
上手く見せる方法を検討
皆で集まり「テクニックも無い私たちがどうやったら見栄え良くできるか」を課題に話し合い、その結果「びっしり隙間なく切り貼り写真を敷き詰め、賑やかさと楽しさを表現する」というものになりました。
作業内容に辟易するメンバー
作業量がとにかく多く、委員全員が深夜まで及ぶ作業を繰り返し、切り貼りの細かい作業に嫌悪を感じだす者や、2度とアルバム委員はやらないと愚痴をこぼす者も現れ、波乱万丈の状況だったのを思い出します。
さらに満をきして出来上がった原稿を見ると首を傾げる内容が散見…。
・あまりに写真が多く我が子を探すのに一苦労
・集合体恐怖症にも似た異様な感覚を覚える
・行事の境界が分からず何を表現したいか伝わらない
あれだけ苦労したのに満足行く結果とならなかった歯痒さがありましたが、変更はできないため、そのまま印刷製本へ。
進呈の際の一言が幸い
アルバムを渡すとき、卒園生や保護者全員の前で、委員代表からの一言を求められ、思わず「今回はありったけの写真をアルバムに投じて、とても賑やかで楽しさを伝えたい一心で制作しました。
ですが、ちょっとウォーリーを探せのようになってしまい… 皆さん自分がどこに居るか探してみてください」と、とっさにわけのわからぬ発言をしていました。
ところが子供はこれに大喜び。ページをめくっては「いたいた!」「◯◯ちゃんはこのページに何人いるでしょうか?」などとアルバムをゲームに見立て、たいそう盛り上がったのです。
保護者からも「これすごい時間掛かってるよね、ご苦労様」など労いの言葉をいただき、皆で「結果これで良かったのかもね」と安堵しました。
でも、もう少し制作の前段階で見やすさを求め、具体的に計画していれば、さらに喜ばれるアルバムになったのでは無いかとの反省が残りました。
キッズドン!より一言
委員の選任要領は大きく二つに区分されます。
1つは自薦で希望しアルバム委員になる。もう一つは希望者が無く、他薦や過去の役員経験の有無等に計られ、嫌でも委員に選任される。前者はやる気に溢れ、猪突猛進で制作に励むことができるでしょう。
かたや後者は「やりたくない」事をやらなくてはなりません。これ程つらい作業はありません。
ですが、この場合の「委員作業の責任」の面で有利な事があります。それは「選任された委員に文句は一切言わないでいただきたい」という担架が切れることです。(多少ぶっきらぼうな表現で恐縮です)
誰もやりたく無いアルバム委員をやるのですから、その位の特権はあって良いであろうという発想です。もちろんそれは心のつぶやきであり、大見栄を切って宣言する事ではありませんが…。
ですが、この有利な面は「好きなように作る事ができる」という言葉に置き換えられ、最低限の制作ルール(掲載の公平性や出費面)を守れば「自己満足」の範疇で事を進めることができます。
Cさんの談話をご覧ください。
もともと「物作り系」を得意としない私たちですので、一体どうやって制作したらいいのか、当初は悩みに悩みました。
議論をする場を持つも「何について話して良いかもわからない」といった状態のさなか、「過去の卒園アルバムを見てみれば何か見えてくるかも」という発想から、職員室で園進呈用の過去のアルバム全てを拝見しました。
「自己満足」方針案
アルバムを見た結果、私たちが掲げたのは「自分自身が納得できればそれで良し」という「自己満足」方針案。
作り手の視点で過去のアルバムを見ると、かなり自己表現が強調され、自己満足に終始してると見えるページが多く、でも先生方は「どのページも素敵にできていて今でも感激するわ」と評価を口にされています。
その時、「自分たちの作りやすい方法で作り、自分自身が納得すれば、それすなわち喜ばれるアルバムになる」という気持ちが芽生えたのです。
役員決定時の宣言
役員選任の会の時に「アルバム予算の範囲内でどのような制作方法にするか、どのような内容にするかは、私たちに決めさせていただき、それに関する異論はお控えいただきたい」旨に断りを入れました。
満場承認となった事は、今思うと非常に重要な宣言であったと思います。
3人3様の制作方法
自己満足方針の元、3人が同じ制作方法でなくても良いだろうという事になり、一人はパワーポイント、一人は切り貼り、そしてもう一人は業者制作委託といった三人三様のやり方となりました。
3番目の業者委託はキッズドン!にお願いし、この契約があれば、仮に他2名が制作に頓挫してもリカバリーを果たしてくれる要因があり、心の支えとなりました。
制作にストレスはありませんでした。定期的に3人で集まり、自己満足かつ上手い下手関係なしの出来てる原稿を見せ合っては、「大丈夫だいじょうぶ、誰もそんなところ見てないから(笑)」「細かい事は一切無視して進もうよ」「テキトーに見えるけどヘタウマにも見えるよね(笑)」などおしゃべりに花が咲き、また気持ちも和み、それも卒アル委員の醍醐味と言えました。
意外な高評価
しかし楽観的に制作した事からアルバムを進呈する時は「何言われるだろう」と今更ながら心臓がドキドキしかなり緊張。
ですが意外にも、お世辞や社交辞令的の労いかも知れませんが、多くの方から高評価をいただいたのには「なんで?」と唖然としました。
園長先生に「ね、問題なく作ることができたでしょう、とても素敵だわ」とお世辞でも声をかけられた時には3人とも目頭が熱くなりました。
おわりに
数多くのアルバム委員と日々電話やメールで言葉を交わし、制作を進める過程で「ストレスを感じてる」「制作に疲弊している」「考えがまとまらなくなってる」と言った心境の変化を感じる事が多くあります。その時は、「“その悩みに値するほど見る側は期待していない”と割り切って、心を軽くしてください」とお声掛けする事があります。
もう一点大切なこととして「努力を認めてもらいたい」という承認要求を捨てることです。事例に記した3名様は、当初は「園児や保護者からの評価」を気に掛け、どうすれば評価に繋がるだろうかを無意識に模索しています。
ですが、結果的に承認要求をなくしたことにより、独自の成果が活きいきと現れ高評価につながったと言えます。己の7割程度の納得度でも問題ありません。自己満足大いに結構です。完成したアルバムは色々な見方によって楽しみ方は膨らみます。
どうか今日の記事内容にある「心を軽くするキーワード」を改めて感じていただき、無理の無い制作を進めていただければと思います。
今回も最後までご覧いただきありがとうございます。それでは、また。
キッズドン! 代表 宗川 玲子(そうかわ れいこ)
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